2010.7.28 _ 2010.8.8
iTohenにて第173回目となる展覧会では、関東を拠点にイラストレーターとして活動する矢田勝美(やだかつみ)氏をご紹介致します。
今展は彼女の普段の仕事である、「食」に特化したイラストレーションの展示、それに加えプライベートの観点で制作された作品の3年振り3度目の発表となる。イラストレーターとして確立してるのにも関わらず、何故 彼女はクライアントのいない作品制作を続けるのだろうか。 三重県鈴鹿市という未だ自然の多く残る場所で生まれ育った矢田は、両親が現在でも“半農半漁”という仕事で生計を立てているという。誠実に仕事を続ける両親、またそういった過酷な労働環境の元でも、屈託なく生きる強さを見せてくれる人々に対して、自分しか出来ない応援の仕方、またその仕事を世の中に紹介するべく「食」のイラストレーションに拘り続ける矢田。東京と三重の間を行き来する生活の中で、時間の経過とともに緩やかに崩壊していく様を見続けている矢田にとって、その緩やかなカーブは、脅威と共に責任感へと転嫁したのかも知れない。エコロジーと言う言葉やキーワードが、多くの企業にとって都合の良い常套句に変わり果ててしまった今だからこそ、この現状に危惧を感じているようだ。 「仕事」では、発注者がいるからこそ成り立つ。裏を返すと、そこには当然、「金銭」が介在するはずだ。デザイナーや編集者の出す注文に対して忠実に仕事をこなさければいけない。その中で、どうしても言えないことや描ききれないことが、ふつふつと沸き起こり、矢田の中で消化させる方法として、自身の作品制作へと向かわせたのではないだろうか。 「LIFE」と題した今展。矢田の考える「生活」に対する哲学が作品を通して垣間見れるのではないだろうか。私個人としても非常に楽しみな展示である。 (記)SKKY/iTohen 鰺坂兼充 ・
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