2011.3.16 _ 2011.3.27
私は自分の描く彼女達の眼差しに、
どこか淋しく冷たいものを感じていた。
彼女達が何を考えているのか、生み出した私にすら解らなかった。
そんな時、紫陽花の花言葉の中に「あなたは美しいが冷淡だ」という言葉をみつけた。
一瞬でこの言葉に惹かれていた。
美しいが冷淡。
反しているようで本当は近いものなのではないだろうか。
彼女達はまだ熟していない大人びた少女のようにも見えた。
だから、「あなた」を「きみ」に変えようと思った。
人は化粧をする生き物だ。
アイラインを引いて、マスカラを塗って、ファンデーションで顔のくすみを隠していく。
自分を綺麗にしていくことによって自信をつけたり、
自分を創造することができる。 化粧は現代の仮面だ。 自分を守る為の鎧なのだ。
私は自分が化粧をしない代わりに彼女達に化粧をすることで
自分を隠していたのかもしれない。
本当は、仮面の下の素顔を見て欲しかったのに。
冷たい眼差しは私の視点。 彼女達に「何が見える?」と問いかけながら、
本当は自分へ問いかけていた。
彼女達の目に映すことで何かを忘れたかったのか、刻み込みたかったのか。
きっと、どちらもだろう。
紫陽花の色彩への憧れ。私の欲望。私にはとても近いものに感じられた。
私が絵を描く理由は、生きた証を残したいから。
今、この地に立っていることを証明したいから。
何かを残しておきたかった。
その何かが、私にとっては絵だったんだと思う。
<記> 岡崎南美
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[紹介文] |
今回、第191回目となる本展では、関西を中心に活動する作家:南美(みなみ)をご紹介致します。 iTohenにて初の個展となります。彼女は現在、某企業に属しグラフィックデザイナーとして仕事をしています。生活を成立させるため、また企業人としての自分の立ち位置を確認したいがため、その道を選択したようです。そしてそのような選択をしてから4年目を迎え、『自分にしか出来ない事』として、作品を発表しようと思い至ったとのことです。 どの作品も黒い水性の極細の0.3mmペンを用い、その細さが際立つよう、ケントボードに描いていくそうです。例えばそこに水彩を用いたり、コラージュを重ねたり・・の技法が、彼女の場合用いられていないところを鑑みると、テクニックそのものにあまり興味を頂いていないのが分かります。比較的、男性の作家には少ないでしょう。そういった意味では、私はとても<女性的>な作家だと感じています。 作品に注視してみましょう。印象的なのは、“目”と“髪”。黒目の中に色々な世界が描かれてるのが印象的です。そして“ふさふさ”とした睫毛がその世界をまるで保護するかのように、びっしり綿密に描かれています。髪の毛は、時に風の代名詞のようであったり、波のようであったり。 そこで気付いたことは、彼女の描く女の子達の“毛”そのものです。出身は、高知県の市内からもかなりの距離がある“宿毛(すくも)”と言う所だそう。高知県の南西部に位置し愛媛県と境を接する場所です。 |
<記> SKKY | iTohen 鯵坂兼充