2012.9.19 _ 2012.9.30
iTohenにて第228回目となる今展(~9月30日まで)では、関西を拠点に活動を続けるasaru.(アサル.)氏をご紹介致します。個展として、まとまった作品をご披露するのは弊廊では初めてとなります。
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彼女の活動は、iTohenからも程近い<tentoten gallery>(大阪市北区中崎町)で知りました。展示の片隅に鎮座する不思議な物体が、鼓動するように静かに動く仕掛けを施したものや、モビールのようなもの。そして平面作品が所狭しと並んでいました。様々な要素を加えれば加えるほど失敗に陥りがちな展示構成は、技術的な仕上がりはさておき、なぜだか絶妙な均衡を保っていました。
少し日が経ち、やはり頭の片隅にチラチラとasaruさんの作り上げた世界観が気になり始めます。『あれは一体、何だったんだろう・・・』この言葉になりにくい感情を、きちんと見極める必要を感じました。そうして一度、まとめて拝見する機会を得たい。様々な方に彼女の活動を知らせたいと思い、展示に発展することになった次第です。
「ヒエラルキーに雨が降る」と、これも一見 不思議なタイトルを提示してきたasasuさん。ヒエラルキー(hierarchy:階層制や階級制のことであり、主にピラミッド型の段階的組織構造のこと)=に雨が降るとは一体、どういったことだろう・・・。
少し彼女の履歴に触れてみます。芸術に対する専門的な勉学に取り組み始めたのが、18歳。多感な時です。版画を先行した彼女は、それこそ「モノを創る」ことに没頭したのでしょう。それは彼女にとって非常に“生産的”な行為でした。特に版画と言うのは、複製を前提としたメディアです。目の前でどんどんと作り上げられる様子にも魅せられたのかも知れません。
卒業し、しばらくは制作から離れたと言います。多くの方がそうであるように、生活していくことを優先するならば、やはり“お金になりにくい分野”からは自然と足が遠のくことでしょう。
しかし自分の考えで、自分の行動のみで創れる世界を知ってしまったasaruさんは、“執着”に近い気持ちで制作を復活させます。その展示を目にしたのが、<tentoten gallery>での個展でした。
わずかなブランクの期間に彼女なりの“社会”に触れる機会を持ったのでしょう。紐解けば、ゆるやかに答えの見いだしにくい“システム”に自分が乗っ取られていることに、ふと立ち止まります。
“システム”は、彼女にとって“ピラミッド型の段階的組織構造”にも感じられたのかも知れません。そこへ持って“雨”が降る。いわば雨は何かの比喩なのかも知れません。
単純極まりないカタチに興味がある、と語ります。その中でも“三角形”がとりわけ気になると。それは、“光”を連想するからだと言います。光=太陽エネルギーは我々人間にとってなくてはならないエネルギ―。これなくして生存はありえません。希望を孕んだものとも言えましょう。しかし、何事も表裏一体であるように、ピラミッド型の三角は、がんじがらめの構造も暗示させます。
asaruさんが降らせる“雨”はどのようなカタチに変換されて表現されるのでしょう、大いに期待したいところです。
今展は平面作品を中心に、ドローイングや即興的に構成される立体作品を中心に40点ほどを予定。
是非、この機会にご来場くださいませ。
iTohen 鯵坂兼充
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asaru. _アサル.
1985生まれ、奈良県在住。
個展 〈グループ展〉 1985 Born in ,Lives and works in Nara,Japan Solo show 〈Joint exhibition〉 |
asaru. web site |