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富田 惠子 銅版画展「もどるときに、思い出すため。」

iTohenにて第290回目となる今展では、関東を拠点に活動する富田惠子(とみたけいこ)さんをご紹介致します。

もどるときに、思い出すため。

「思いだすため」描いていくというのが2007年の初個展から一貫して続けているテーマのように思えます。知らないものを外から発見していくというよりは、 内に手を伸ばしていく作業。また今その感じは体の中になくても、来るべき時が くれば、ポンと「思い出す」ので、日々の中に希望や予感を持ちつつ探っていく、 アンテナを張っていくというのが、私にとっての描く行為なのだと思います。

とっても些細でシンプルな言葉や情景のうしろに、普遍的なものがあるものですよね。

広がり、果て、せつなさ、静けさ…そんな物事に出会った時、ズンと体がふるえます。

きっとそれはめまぐるしい日常の中で本来の自分に立ち返る(もどる)ため、私には必要で、 また果ては生命時間を終えて来た場所へもどっていくイキモノ達にも、 必要なのだろうとも思ってしまうのです。

私にとって描くということは、大学卒業まで縁遠いものだったのでした。 社会人になってから初めて手にした手段です。 表現をして展示をするなんて、想像も出来なかったのに。

自分の中に在ったものを持ち出して、それを媒体に他の人とコミュニケーションができる… こんなことが可能だったんだ…と今でも展示のたび感動してしまいます。

でも大学在学中明け暮れた考古学での発掘作業が、「土」「肌触り(質感)」「いのち」というソースを与えてくれていたのかもしれません。

事あるごとに教授に教えられた「もの」の在り様や、 よく触り謙虚にみるということは「ものづくり」の基本だなとしみじみ思います。

富田惠子