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岡崎邦夫 コレクション展

iTohenにて第259回目となる今展は、個人のコレクターである岡崎邦夫(おかざき・くにお)さんの、これまで収集して来られた作品をご披露する機会となります。
作品を買うって? 収集する喜びとは?そもそもなぜ、作品を買うようになったのか・・・ 岡崎さんの眼差しで集まった作品を通じて、その楽しみの一端を感じ取って頂ければ大変喜ばしいことです。


岡崎邦夫さんは大阪府豊中市(阪急宝塚線 豊中駅下車すぐ)で眼科を経営されるドクターです。何時頃の出会いだったでしょうか。確か8年ほど前から定期的に展覧会を覗いてくれるお客様の一人でした。

気さくなお人柄の岡崎さんは、気軽に話し掛けて下さったこともあり、程なくして親しくさせて頂き現在に至ります。お越しになるたびに四方山話にひと花咲かせて頂き、颯爽と次の展覧会を観に行く・・そんな印象の方でした。

聞けば、午後からの休診の毎週水曜日のほとんどは、この「画廊周り」に費やしておられるとのことで、しかもその移動の大半が徒歩と聞いて驚きもしたのです。

自然と岡崎さんと言う個性に興味を持ち、実際にクリニックにお邪魔をして、その足で稼いだと言う作品を観に伺ったことがあります。

「え!こんな所に、◯◯◯◯さんの作品が!?」の連続で、院内のありとあらゆる所に作品が飾られていました。岡崎さんが書斎として使っている部屋には、飾りきれないほどの作品が、それこそ所狭しと積まれていて、本棚には、ドクターならではの専門書は勿論のこと、芸術に関する書籍がぎっしりと並べられていました。その組み合わせがなんとも面白い光景だな・・とも感じたのです。

ひところの興奮を抑えて、お茶を飲みながら話に興じている間に、これぞ収集する醍醐味を知っている方だな、と感じたのが今展の事の発端でした。

そもそも、なぜ「芸術」に興味を持ち、実際に収集することになったのか?岡崎さんに質問をぶつけてみました。以下、読んで下されば幸いです。

岡崎氏)
’98年に父親から引き継いだ仕事場が再開発計画のため立ち退くことになりました。そのため近隣の代替地に新しい診療所を建設することになったのです。高校の同級生に紹介してもらった 建築家の先生に建築設計をお願いしました。やがて建物が建ちあがってくるに従って細部の打合せをしていくなか階段や踊り場、廊下や待合室の壁面が殺風景になるのでどうするのかが問題になりました。
そこで、建築家の先生は絵を飾られたら良いのでは?と言ってくれたのです。

それまでは絵のような美術作品とは無縁の生活でしたので、一体 美術作品はどこで購入すればいいのかさえ全く知らなかったのです。でもデパートの外商に頼む気はなく、まず当時発刊されていた「※ぴあ」を買ってギャラリーの週間スケジュールや紹介記事を精読しました。

とりあえずまずは出掛けてみようと、ギャラリーの集結する西天満(大阪市北区)や、京都は東山三条界隈を歩き回りました。 当時はレンタルかコマーシャルの区別もなく、あちこちでいろんな人から教えを乞いました。 その時に知り合った作家さんやギャラリストの方たちとは今でも良いお付き合いをさせていただいています。

購入した作品は版画、若手のペインティング(平面作品)が多かったです。 作品を購入する動機は、ひとつはこれはある画廊ですが、そのギャラリストの選んだ作家(たいてい若手)と作品に対して、私と波長がピッタリと合うことがあります。そしてその印象を優先すれば、そのまま衝動買いにつながるのです。

また何回か展示を積み重ねて見たり、作家と実際に話したりして作品の後景の文脈が私なりに理解できたと思ったときも購入に至ることが多いです。

ただ振り返ってみれば買い始めた最初の数年間は、ギャラリストの勧める作家の作品を購入することが多かったように思います。それが次第に変わっていったように思います。

当初は画廊から画廊へと点と点を結ぶようにホワイトキューブの内部のみを見て歩きました。 そこで出会う作品、作家、ギャラリストとの邂逅は私にとっては何事にも代えがたい時間となりました。

次第に点と点を結ぶ線にも興味が生じてきました。 すなわち、「街歩き」です。 ギャラリーのまわりには古本屋、カフェ、古道具屋、個性のあるカレー屋など不思議に軒を連ねる様にあります。 そこで出会う人々から教わることが沢山ありました。

今までついぞ知らなかった街の表情や息遣いを感じることが出来るようにもなりました。仕事場と自宅の往復といった閉じられた世界の中では、このような体験はできなかったと思います。

岡崎さんのお話を聞いてなるほど合点が行きました。いつもお会いする度に「少年」のようにキラキラと輝く目をされる理由が、この出会いを求めた「街歩き」にあったことを。

※注釈
ぴあ株式会社が発行していたライブやエンタテインメント、出版や展覧会情報などが掲載された情報誌(発売期間1972年~2011年)


どうぞこの機会にご高覧頂けますよう宜しくお願い致します。尚、本展は個人の収集した作品や骨董、書籍が並びますので販売不可となっております。予めご了承下さいませ。


[岡崎邦夫×小吹隆文によるトークイベント]
日時:12月8日(日)15:00~(約一時間を予定しております)
場所:Books Coffee Gallery  iTohen
参加費:無料(1drinkは別途ご注文下さい)
参加ご希望の方は 06-6292-2812 又は メールにてお知らせ下さい。
*氏名、電話番号、参加人数(お連れ様の氏名)をお知らせください。

iTohen 鯵坂 兼充