2013.3.20 _ 2013.3.31
iTohenにて第241回目となる今展では、ガラス作家 青木邦恵(あおき・くにえ)氏をご紹介致します。
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青木さんの作品は、本人の見た目とは違い、案外「男気」のあるものだと感じています。
と、いうのもその重量感、質感を目の前にして例えば創作の現場を想像したとき、一筋縄ではいかないであろう風景が目に浮かぶからです。
元々は画学生だった青木さんは、何かの機会でガラスと言う素材に触れる機会があったのでしょうか。キャンバスに触れる時間より「透明の立体」に携わる時間に、言葉には言い難い真実を感じたようです。
以来、倉敷での学生時代を修了し、実家のある大阪を素通りして窯を持ち込み、現在のアトリエである岐阜に移動します。
青木さんの<カタチ>を作り出す原型は粘土を使っての作業だと言います。それを耐火石膏(雌型)に置き換え、そこに溶かしたガラスを注ぎ込む。熱が冷めて目指した形が出来上がるのを時間をかけてじっくりと待ち、いよいよ「磨く」作業を経て完成させる・・と言う長い道のりを経て作品が完成します。
待って下さい。よく考えると、我々が街中でそこかしこと目にするブロンズ像と同じ行程です。なぜ、金属ではなくガラスでなくてはならなかったのか?
なによりガラスが持つ「透過性」に魅力を感じているとい言います。透明だが、そこにある。重量を含め、その素材が持つ確固とした存在感が、青木さんにとって何より信用出来るに足るものだったのでしょうか。
表面の仕上げに着目してみます。うっすらと「くもり」のある、もう少し磨き上げれば、それこそピカピカのガラスが見えそうな、その半歩手前というところで、あえて彼女は手を引いています。
潔癖さを求めない・・と言った彼女の眼差しの向こうに、もう一枚、皮を剥いた本来の姿が待ち構えてくれている。そんな事を感じさせてくれました。
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是非、この機会にご来場ください。作品を透過して生まれた光を眺めるだけでも、また豊かな風合いが感じられる展示になっています。
iTohen 鯵坂 兼充