2014.7.23 _ 2014.8.3
iTohenにて第274回目となる今展は、関東を拠点に活動する画家:狩野岳朗(かのう・たけろう)さんをご紹介致します。大阪での個展は初めてとなります。
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狩野さんの作品を初めて拝見したのは2008年に開催した「おんさ」という公募展でのことでした。当時は本人と話す機会は持てませんでしたが、関西での合同展示に関東から参加してくれたことが嬉しくよく覚えています。作品は“木”のようなものが描かれていた(おそらく…)と記憶しています。
その後、装画やイラストレーションでのお仕事、展覧会など、間接的ではありますが多方面で活躍される狩野さんの作品をみる場面が増え、彼に対する興味がむくむくと湧いてきた昨年、ここiTohenを訪れてくださり今展に発展するに至りました。
狩野さんの絵に対して一貫して感じる印象は “心地よさ” です。それはなぜなのでしょう…?
(主観的ですが)適度に保たれた余白がそう思わせるのか、はたまた筆跡や痕跡なのか、調和のとれた色彩なのかもしれないし、意識と無意識の往復のうちに描かれたような線や塊が… そのあらゆる要素がキャンバスの中で気持ちよく同居しているように感じます。その調和が旋律となってじんわりと響いてくるのです。
そして、観る側にもきちんと考える“余地”例えると“入口”のようなものが用意されているように思えるのです。おそらくその入口の先には、私たち個々の記憶や風景と繋がっているのかも知れません。
さて、今回のタイトルには「直、間接/フラクタル」という少々風変わりなタイトルが掲げられました。そのことについて、このように答えてくれました。
自分の根底のテーマとしてある、木を描くという事を
また初心に返って、直接木を見に行ってスケッチなどをし、描こうと考えています。
また以前から気になることで
大きい物の見え方と小さい物の見え方には相似形があるという事
(その考え方の一つとして”フラクタル”という言葉があります)
直接見た木の印象と、間接的に顕微鏡やルーペを使ってその木の一部を見たときの印象を描くことで
重要な事柄に近づこうと思います。
どうやら狩野さんはもう一つの“入口”を用意してくれたようです。
是非、 この機会にご自身の目で作品と対峙してみてください。
記 iTohen 角谷 慶
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狩野岳朗
1975年生まれ
2007年より油絵を中心に個展活動を始める。
本の装画や挿絵、CD ジャケット、デザインを手がける。
最近では「晴れたり曇ったり」川上弘美 著、
「私が語り伝えたかったこと」河合隼雄 著の装丁画など。
http://sktec.org
東京で古道具屋「IONIO&ETNA」を運営。独自の商品製作を展開。
http://ionioetna.com