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佐藤 貢展

<紹介文>
佐藤氏の作品を観せてもらい、久々に動揺した。いや、感動に近いものだ。佐藤氏は筆者と同様、1971年生まれの33歳だが今回が初めての公の場での発表となる。作品の特徴として廃材を利用した半立体のものが最近では多く取り掛かってるスタイルとのこと。

彼の経歴を辿ろう。佐藤氏は大阪芸術大学に在籍したものの1年で中退する。彼曰く、「自分は無茶苦茶するから迷惑をかけてしまう・・」「単純に小さい頃から学校が苦手なんですよ。」と苦笑いする。彼の眼差しからは媚びも嘘も感じない。まさに人となりが、作品へと転化され表現されている。それも純度の高い転化だ。

大学を辞めた彼はアルバイトを転々とし、作品制作から遠のいた。これは生活を優先させるためのしごく自然な選択であったと思う。しかし、いつしかアパートの鍵もかけず、ありったけの全財産である23万円とパスポートだけを握りしめ、“つっかけ”のまま上海行きの船に乗り込み、気が付けばアジア圏を中心にアメリカまで渡り9ヶ月間の放浪に出てしまったと言う。こんな“漫画のような”人生を歩んでいる人が実際にいたのか・・とさらに驚いた。
放浪から帰ってきた<漂流者>である彼は、自然と海に近い場所へと移動する。たまたま呼ばれるように立ち寄った現在の住まいである新和歌浦で女性的な抱擁に似た安堵感を覚えたそうだ。彼の当面の住みかは、その浜辺。時間の経過とともに住む家も出来、生活の手段である仕事もそこで行っている。 現在の彼の生活は、夜中の2時半から仕事を始め、それをお昼過ぎまでこなし午後からの空いた時間で作品制作を行っている。最近ではボランティアで始めた近所の子供達との<お絵かき教室>を辞め、趣味に近い範疇で行っていたバンド活動も辞め、作家としての道を歩みたいと制作一本に絞り込み、決意を固めての個展にのぞむ。それは、彼にとっての精神的な漂流との決別。あらゆることに根を下ろすことの決意に他ならない。 誠に私的だが、この人物と作品に一目惚れしてしまった。彼の作品はある種の郷愁とファンタジーを兼ね揃えた<建築物>なのである。自宅の目の前に広がる海が運ぶ廃材をゴミと扱わず、材料として扱い直す彼の作品はある意味で漂流物のコラージュであろう。いや、時のコラージュとも言えるかも知れない。その一つ一つの漂流物そのものに鑑賞者としての私達の創造力を委ねることができれば、物語が作品という装置を通過して、壮大な広がりを作り始めるはずだ。

<記> SKKY 鯵坂兼充

<履 歴>

佐藤 貢 SATO,Mitsugu  1971年生まれ。 1992年  大阪芸術大学美術学科 中退。 1994年~ 中国よりアジア諸国、アメリカ、中南米諸国などを旅する。 1998年  和歌山市へ移住後[流木]を用いて作家活動を再開する。 1999年~ 毎年、年に一度 和歌山市にてグループ展に参加。 2005年  第1回個展(大阪:iTohen) 2005年  巡回展(東京:limArt)