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キャサリン・フークス 個展「ミルフィーユ」

私は、モダニズムとそれに基づいて創られた作品を、単に、自分の制作のインスピレーションの源として捕らえるだけでなく、創作に対して誠実である芸術家の規範として とても大切に思う。

この20年間、ポストモダンの世界では、このような創作に対して誠実であろうとする姿勢は、単なる模倣にすぎないと皮肉られてきた。
しかし、それにも関わらず、創作に対して誠実でありたいという私の脅迫にも似た強い気持ちは、私の作品に命を吹き込んでいるのだ。

<記> キャサリン・フークス

<紹介文>
今回、iTohenにて第31回目となる企画展では、ニュージーランドを拠点に活動を続けるキャサリン・フークスをご紹介致します。

主に平面での表現を得意とする彼女は旅で訪れた先々で、その環境から素直に感じ取ったものを具現化するために、あえてその場所で獲得した道具や素材を元に、可能な限り一つの体験記録として作品を制作していく。 視点はあくまで“Gringo”(=日本で言うところのガイコクジン)として自己を捉えた現地の人々をシミュレーションしているのだから面白い。

先日、奈良に滞在する機会を得た折りに作り上げたのが<SEX TOY>なるものだ。膨らませて完成する柔らかい彫刻(ソフト・スカルプチャー)としても考えられる牛の既製品のおもちゃの上に、乱雑に貼り付けたかのように見えるそれらは、一部で歪んでしまった私達日本人の社会のあり方、また人間関係をもさらけ出しているかのようだ。
一方、彼女の中での本道とも言えるペインティングは全く異なるスタイルで展開される。 経験を軸とし、勘をも含めた入念な計算を構築していき、熟考に熟考を重ね、ようやく気持が沸点に達し自己の中で疑いようのない明快な概念が立ち上がった時、初めて筆を進め始めるようだ。
これは旅先での“現場”で制作する時とは対極で、自分自身の仕事の役割を分析しているという視点が前提としてあるのではなかろうかと思われる。彼女の作品を時間をかけて眺めている間に、このような事が私の中で感じ取れたのだ。
その理由は<層 レイヤー>が重なっているかのように見える彼女の作品のスタイルのせいではないかと考えた。自由で無垢な心持ちで描ききることに極力努めることに徹し、また主観をも含めた第一層目。そして自分自身を何者かになりきりシミュレーションして塗り重ねていく第二層、第三層・・。
彼女の言う「計算尽くした上でのまぐれ当たり」を目指した画面構成を代弁すべく積み重ねられた正方形が規則的にある形(ここでの市松模様)を形成していく。

その薄くありながらも、それぞれ違う厚み(熱み)を持った層と層の重なりはあたかも“ミルフィーユ”のようにほんのり甘く微妙な食感をもたらし、ついでにもう一つ、、と言わせんばかりの誘惑を感じさせるてくれるのである。

<記> SKKY 鯵坂兼充

Catherine Fookes キャサリン・フークス
[略 歴]
1976 ニュージーランド生まれ
2000 バチェラー・オブ・ファイン・アーツ修了
2005 ジェイムズ・ウォレス・トラストアワード 受賞
サマー・ワイカト アートアワード 受賞
[展覧会履歴]
2004 Odhams’Butterflies/アパレルブランドNatalija Kucija ウィンドウプロジェクト:オークランド
2005 Sex Toys/サンプルギャラリー:奈良 ウィンドウプロジェクト
ライラックアイランド Just Another Gringo/スノウ・ホワイトギャラリー
オークランド
2006 ミルフィーユ/iTohen:大阪市北区本庄西