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中島 佳秀 展「魚と足」

[開催にあたって]
なぜ「絵」を描いてしまったのか。という点。
今まで、音を使った作品を作って来たので、当然サウンドインスタレーションを構想もしたが、 音量と場所との問題、大阪での2週間の継続的な展示期間中のメンテナンスを考えて、まず除外した。
その上で、考えた。  何をするか。
なんとなく「絵のようなもの」にしようと思った。 理由はなかった。

僕自身にとっては、音についても同じだが、「何」を作りたいのかという具体的な制作の対象など、そもそもない。まず、感じにくい自分について考えて、それが何を見て、そして聞いているのかを考える。
そして、絵を描く事を前提に、自分自身が普段何を見ているかを考えた。
そこで思い出された光景は、スーパーの明るくてらされた魚売り場だった。そこで僕は最も恍惚として視覚をもちいている。だからまず、魚を描こうと思った。 同時に、そして、描けるはずもない魚を描いて、なお、思い出したことがあるなら、 それをつけくわえて描こうと思った。

いずれにしても、ほぼはじめて、人に絵を見せる。

<記> 中島佳秀

[紹介文]
今回、第122回目となる本展では、主に関東を拠点に音楽家としてまた、グラフィックデザイナーとして活動を続ける中島佳秀(なかじまよしひで)をご紹介致します。

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前述した中島本人のコメントにもあるように彼はいわゆる視覚表現での発表は初となる。
しかし、全くの素人という訳ではない。音楽家とし、またグラフィックデザイナーとしての経験と場数を踏んできた彼にとって今展を開くことになった契機は山ほどあったのだ。
「機が熟した」その一言に尽きる。

具体的なモチーフ<魚>を描いた一連の作品群は真実の形を追い求めるかのように描いては削り、削りとっては描き、また衝動や直感のみを頼りに抽象表現された作品群は、一呼吸置いた後に、冷徹な目で再編集され、その形を定着させている。そのどちらもが相反するようだが、しかし<根>の部分で同じベクトル上に位置するようだ。

例えばしっとりと繊細できめ細やかな蒸留水。
オーケストラで言えば破壊的に演奏しつつも決して聴衆を無視しない指揮者。
意識下に沈む情熱に静かに訴えかける語り部。

私は彼の作品を拝見して、そのような印象を抱いている。

<記> SKKY/iTohen 鯵坂兼充

中島佳秀

 

75年生まれ。 サウンドアーティスト、グラフィックデザイナー。サウンドアーティストとして、ライブパフォーマンス、インスタレーション、テープ作品の発表を行う。
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○テープ作品 ・CD「V.A./port doc.1-5」(port/2004)
・CD「V.A./tribute to yes, mama ok?」 (Feelin’ Groovy/2006)
※evalaとの共作「mnemon」として参加
○インスタレーション ・「cam-tv/mic-sp」
(Anpontan オープニング展- 昭和40年会 “七人の小侍+1″/2005)
※evalaとの共作「mnemon」として参加
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グラフィックデザイナーとしては、CI、SP、パッケージデザイン、造本等や、パートナーでもある
書家・華雪の制作物全般を手がける。
また、華雪とデザインプロダクション「studio loup」を運営。 現在東京在住。