
2025.11.8 _ 2025.11.24
中谷圭(なかたに・けい)さんと、田中洸紀(たなか・こうき)さんのお二人による展覧会です。遡ること1年ほど前でしたか。関西のあちこちのギャラリーを自分たちの眼で見ながら、開催会場を吟味しているその一つとして当方に立ち寄って下さいました。まるで、迷子の犬のような目をした彼らの眼光が脳裏に焼き付いています。
小さい頃からの仲だと言うお二人は、時間の経過とともに、誰もがそうであるように違う道を歩み、適齢に互いに家族を築き、仕事をしてその生活を支えています。きっと青年期では考えもしなかったであろう、旧友同士の二人展。微笑ましくもあり、同時に世間に対してまた、自分自身に立ち向かう姿勢をお聞きした時、静かでしかし、心を揺さぶられる確かなものを感じました。
互いに違う視点、立ち位置。創作を通じて交わる点が見出せるのでしょうか。その交差し、輝く点が観れることを楽しみにしたいと思います。
イトヘン=アジサカ・カネミツ
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ものの本質を捉えるために写真として写すこと、ネガティブなものを肯定しようと絵の具をキャンバスに 移すことは、物語を通じて自己を投影する行為と深く結びついている。
田中は、もののかたちを切り取り外形からみたその役割や、本来の役目を終えて形骸化した物体のフォ ルムを写し出し、その本質を探る制作をしている。 イメージをデジタルスキャンやphotoshopでの加工、ソラリゼーションといった手法を複合的に使って銀 塩プリントする。最終的に完成されたイメージは段階を経て抽象化され、元画像は判別できないものと なるが、物の本質を時間や文脈から解放し、過去と現在、あるいは未来が交錯した時間軸を横断した画像が出来上がる。
中谷は、描く対象の認識が困難な状態を目指すことで、欠落やマイナス、ネガティブなものの意味を肯 定的に支えようとする。 図像としての認識が困難な状態を目指し、プロセスの一回性を重視する。パレットに描いた絵の具の蓄 積をメディウムを使いキャンバスに写しとることで、最後に絵画として現れるものを自身で完全に把握し ないまま制作を進める。 つまり、この不確定性のあるプロセスでは、制作時と完成時の間で視点の移動が生じている。 物語を鑑賞し、「私なら」と考えることで、想像を広げ新しい知見を得る。 詩から、生い立ちや表現に対する姿勢に、共感し違いを見出す。 映画をみて、非現実的な状況に自分を置くことで、新しい自分に出会う。 視点を移すことで見えるもの。 二人の間で交わすとりとめのない会話から、制作における共通のキーワードを抽出し、互いのメディア から視点の移動について解釈を試みる。
作家プロフィール
◎ 田中 滉紀(たなか こうき)
写真というメディアにおいて、もののかたちを切り取り、外形からみたその役割や、本来の役目を終えて 形骸化した物体のフォルムを写し出し、その本質とは何かを制作を通して考えている。
1996年 和歌山県生まれ
2019年 Santa Monica College 写真課程 修了
2020年 関西大学法学部法学政治学科 卒業
展示・受賞
2024年 個展「89/90」和歌山市立図書館
◎中谷 圭(なかたに けい)
欠落やマイナス、ネガティブなものの意味を肯定的に支えることを考えて絵画を制作している。 プロセスの一回性を重視し、イメージの認識が困難な状態をつくりあげる。
1995年 大阪府生まれ
2018年 京都市立芸術大学 美術学部 美術科 油画専攻 卒業
2020年 京都市立芸術大学大学院 美術研究科 絵画専攻(油画) 修了
展示・受賞
2016年 グループ展 「6人の作家 素材のカタチ展」阪急うめだ本店 10階
2018年 第18回京都銀行美術支援制度 奨学生
2018年 個展 京都市立芸術大学 学内ギャラリー
2024年 第1回あさごビエンナーレ 入選