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美術同人誌「四月と十月」創刊20周年記念展

一見すると実に地味で、でも紙面にしっかりと目を凝らすと内容はとても先鋭的。そんな同人誌を作っている方々がいます。画家の牧野伊三夫<まきの・いさお>さんが自ら発行管理人を務めるこの本は、年に2回のいわゆる「四月」と「十月」の年2回に刊行されている美術雑誌です。
参加する作家たちによって制作運営が行われています。誌面の作品をとおして率直に意見を交わし、日常的な制作活動を励ましあうことと、美術家をとりまく状況について研究することが目的と“創刊にあたって”という章の中に記載されていました。
ここイトヘンでは、なんと実に16年振りの展示となりました。ぜひ、この機会に会場まで足をお運びくださいませ。

記載=イトヘン 鯵坂兼充


ごあいさつ
このような大変な状況のなか、ご来廊くださいまして誠にありがとうございます。この展覧会は、私たちの美術同人誌「四月と十月」の創刊二十周年を記念して、小誌の取扱店や同人の出身地を巡回し、それぞれの地域との交流を深めようと企画したものです。当初は、二○二○年四月から東京を皮切りに全国を巡回する予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で開催が一年延期となりました。小誌同人によるグループ展は今回で五回目ですが、巡回展は二○○四年に創刊五周年を記念して東京、北九州で開催して以来、十七年ぶりとなります。展示作品は、とくにグループ展としてのテーマはなく、各自が自由に制作して出品しています。
「四月と十月」は、社会的な利害、世評とは離れたところでアトリエとアトリエをつなぎ、美術家の日常的な創作活動を励まし合う目的で一九九九年に創刊しました。以来、毎年二回、編集者、デザイナーなどの協力ももとで自主運営により刊行を続けています。創刊時の同人の数は六名で、まだ質の悪かったオンデマンド印刷で刷り、ホチキス綴じ製本の三十二頁の冊子でした。出来上がった三百部は六人で五十部づづ分け、知り合いに渡したり、各自の個展で販売したりしました。スケッチや水彩画などを載せただけの共同画集のようなものでしたが、第三号からは書店でも取り扱っていただくようになり、その頃から読み物としても楽しめるようにと美術関係者や文筆家による連載などを載せるようになりました。また、二○○三年の第九号からは、大洋印刷株式会社から文化事業として援助を受け、現在のようなオフセット印刷の角背の製本になりました。このときはとてもうれしかったです。
一人で多くの時間を過ごす画家にとって、互いに遠慮なく批評したり、励まし合う身近な仲間は大事な存在です。また、それを通じて生まれる交遊は、精神的な面でも大きな助けとなり創作の糧ともなります。しかし、一人でこれから画家としての活動をはじめようとしたときに、どこにでもありそうなこうした気安い交流を持つ場が僕の周囲にはありませんでした。小学生時代の絵友達の田口順二君と、九州と東京で離れ離れになって絵の話がしにくくなったこと、石井柏亭らの「パンの会」、松本竣介の「雑記帳」、カンディンスキーたちの「青騎士」などの芸術家たちの集団活動への憧れなど、創刊の同期はいくつかありましたが、そうした場を作りたいという思いがもっとも大きかったと思います。「四月と十月」の目的は、同人誌を作ることではなく、画家が自らの創作のための自由なコミュニティを作ることです。そして、ここでは各自が純粋に、現在持っている自分の内的才能と向き合える場所にしたいという考えから、キャリアや年齢、学歴などによって生じる人間同士の関係性は一切排除して、いわゆる創作活動のための聖域作ることを理想としています。同人雑誌としての思想も主張もなく、そのときどきのことを掲載する会報のようなものにすぎない本ですが、このような出版物を気にとめてくださる方々が全国におられ、おかげで私たちの交流の輪がひろがっています。小誌を取り扱ってくださるお店の方々には、この場を借りてあらためて感謝の気持ちをお伝えします。
そしてまた、この巡回展のために会場をご提供くださいました「月光荘画材店」、「ON READING」、「iTohen」、「d3 gallery」、「ひめくり」の方々に心よりお礼申し上げます。

二○二一年 四月六日
四月と十月 発行管理人 牧野伊三夫


【出展作家】
稲垣えみ子/瓜生美雪/おおらいえみこ/オーライタロー/加藤休ミ/金井三和/作村祐介/白石ちえこ/鈴木安一郎/髙橋収/田口順二/扉野良人/浜中由紀/早川朋子/福田紀子/牧野伊三夫/松林誠/松林由味子/松本将次/三梨朋子/ミロコマチコ/山崎杉夫/好宮佐知子

画家のノート「四月と十月」