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Sakana 個展「ここにさく」

iTohenにて第300回目となる今展では、関西を拠点に活動し始めた作家、sakana(さかな)さんをご紹介致します。

このiTohenの近所にたまたま住んでいると言う女性。以前から気にはして頂いていた様子です。sakanaさんは、大阪デザイナー専門学校で学びました。イラストレーション(商業美術)を学ぶも、肌なじみが良くなかったようで、在学の2年時から<絵本作家>コースへ進路変更したと言います。

そんなこともあり、ひょんなことから本屋に行き、改めて絵本のコーナーに行くようになりました。そこで思いもかけず2冊の絵本を衝動買いしたと言います。そこでようやく自我が芽生え、制作に没入することになったそうです。言わば、他人ごとから「自分ごと」に変換した瞬間だったのでしょう。スイッチが入ってしまったのだから、灯し続けるしかありません。

何より、学生時代の環境が良かったようです。気のおけない仲間が出来、自分のしていることや選択したことに自信に似たものを持つようになったのかも知れません。

卒業後、絵描きを目指しアルバイトしながらの生活が始まりました。この時から親元を離れて一人暮らしも始まったそうです。強い意志というより、sakanaさんが絵を描くと言う創作行為はもはや日常の一部になったそうで、仕事で疲れてた時ほど描かずにはおれない心境になるようです。

彼女によれば、絵を描く時間は「今、ここ 」を再認識するに持って来いの手段と言います。未来に対して、希望を見出しにくい自身の性格をよく理解しているようで、その事を解消したり、折り合いを付ける方法をお若いのによく知っているひとだなぁ、、ととても感心しました。 果たして、僕が23歳の時に自分の置かれた状況をこんなにまで俯瞰できたであろうか。。。

一人暮らしを始め絵を毎日描き、仕事に行き、生活を続けていく中で忘れていたことや、親に愛されていたことなどを思い出したと言います。絵本の衝動買いから始まったsakanaさんの覚醒は、色々なものを呼び戻してくれたようです。逃げることを辞めた途端、生きるエネルギーに生まれ変わり、光指す方へ顔を向けれるようになったと語り聞かせてくれました。

「何もかもが有難く感じられるようになった。」と言うsakanaさん。「ここにさく」と題した本展で、その実証が始まります。ぜひ、その芽ぶきを始めた作家の姿をご覧になってください。

iTohen 鯵坂兼充