2014.5.25 _ 2014.6.8
iTohenにて第270回目となる今展は、関西を拠点に活動する写真家:村東 剛(むらひがし・ごう)さんをご紹介致します。
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村東さんが初めてiTohenで展示してくださったのは2008年2月のことでした。
大阪では例年になく大雪に見舞われたにも関わらず、たくさんの方がご来場してくださいました。お客さんがお客さんを呼ぶ、その時の反響は今も鮮明に覚えています。
そこには、いわゆる“ペット写真”ではない、何か別の魅力が確かにありました。
村東さんは言います。
「自分自身が写真を始める前から抱いていた「写真とはこういうものだ」というのをやりたかった。世の中に芸術的な写真、感動的な写真も沢山ある。だけど、誰もが無条件でいいと思う写真は何か。それは、親が子供の成長を撮った写真ではないかという思いに至ったんです。そこで、おとちゃんを我が子のように撮ったら面白いだろうなと。だから、単にペット写真ではなく“きっちり撮る”。動物写真ではなく“ポートレイトとして撮る”。この2つを徹底しました。今まで自分が仕事を通して培ってきた技術を、惜しみなく投入してやろうと。」(小吹隆文氏によるインタビュー記事より抜粋)
これを読んであらためて成る程と納得しました。
“おとちゃん”は村東さんにとって「写真とは?」という問いに対する一つの答えにもなっていたのです。
なぜ、鳥好きでもない自分がこれほど魅せられるのか。なぜ、ここまで反響を呼ぶのか。
そこには村東さんが今まで培ってこられた写真家としての経験と技術の裏付けがあってこそですが、ひとえにおとちゃんに注がれる絶え間ない愛情が、1枚1枚の写真の中に表現されているからに他なりません。
約6年の歳月を経てようやく完成した写真集「インコのおとちゃん」。
今展では、未収録の写真も含め約80点の作品を展示しております。“写真”だからこそみえてくる多彩なおとちゃんの表情を是非ごゆっくりご観賞ください。そしてその背景に流れる豊かな時間を感じて頂ければ幸いに思います。
記 iTohen 角谷 慶