2014.5.14 _ 2014.5.25
iTohenにて第269回目となる今展は、関西を拠点に活動する濱田キヨハルさんをご紹介致しております。
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私の「世界旅」の始まりは、幼い頃に小さなブラウン管で観た旅番組からでした。 初めて観る世界の都市 は、原っぱで秘密基地をつくり魚釣りで遊び廻る私にとって、別世界の話で、仮面ライダーやウルトラマンなら明日にでも会えると、日常の事の様に考えていましたが、ブラウン管の中の街は遠く、行く事が出来な い宇宙の果ての様に思っていました。(仮面ライダーやウルトラマンもブラウン管の中の世界なんですけど 現実世界と思っていました)布団に入るとヨーロッパの街にショッカーが出現! 新聞記事みたいな変な夢 を見ていた事を思い出します。 ローマのコロッセオ、パリのエッフェル塔、ニューヨークのエンパイア・ ステート・ビルディング。 一枚のポストカードの様に覚えています。 その旅番組で、一番印象に残って いたのが、コルドバのメスキータ。 初めてそこに立った時の思いを、今でもワナワナと震え、感じます。
そんな子どもの頃の思いは、ずっと忘れていて、大人になり何度目かの旅行で行ったプラハの時計台の前で、 子どもの頃に観たブラウン管の中の街が突然現れたのです。 「ああ、これが映画で見るフラッシュバックと いうやつか」まるで映画の主人公のようにボーッと子どもの頃の思いを振り返っていました。 ポストカー ドを捲る様に。 とても幸せな気分でした。 果てし無く疲れ、眠りに引き込まれる一瞬の様に。 あの頃 は、仮面ライダーやウルトラマンには、いつでも会えると思っていたのに、未だに会えず。 しかし、訪れ る事はないと思っていた遠い、遠い世界の街へ、今こうして立っている。「大人になるって、こうゆうこと なんだね」 30 歳を目前にして、異国の時計台の前で、本当の成人式を迎えた気持ちになりました。 3 時 になると鐘が鳴り、カラクリの人形達が動き出す。 あの頃のテレビでは、聞こえなかった外国語の会話や、 カラクリの音。「旅をするって、こうゆう事なんだね」それからは、子どもの頃の好奇心が焼き直しされ、再 び加速し、そして、大人版リアルポストカードを選び巡る「世界旅」が始まるのでした。
今回の展示作品は、私、濱田が日常の糧として「ポンちえデザイナー = イメージを絵姿に変換する」を生業としており(勝手に名乗っているだけでその様な職業は実在しません。本職は、建築関係のデザインです。) 20 年前のプラハから始まった、ポストカードを巡る「世界旅」を続けてきて、その街で観たもの、感じた事 触れた世界を描いた作品です。2004 年北京・上海、2008 年パリ、2010 年ミラノ・ヴェネチア、2012 年 バルセロナなど、アパートやホテルで過ごした数週間の想いをつめこんでいます。 そのほか、旅から生まれたマカロンケンを始め、仕事やお友達関係で制作した作品を展示させて頂いています。 ギュッとつめこ んでいますので、パッと観ただけでは、判りづらいと思います。 時間をかけてみて頂けると、少しづつ見 えてくる物語や不思議な世界。 どうぞ、ごゆっくりご覧になり、お楽しみください。
記 濱田キヨハル
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「ポンちえ」って何なんだろう、とネット頼りにまずは調べてみました。でも検索に引っかからない・・・はたと困って「ポンチ絵」では、いくつかの事例が上がっていたので読んでみると、なるほど。
ご存知の方はいらっしゃるでしょうか? 建築デザインの現場での解釈では、イメージを共有化する為に描くスケッチのことを言うそうです。建築家はエスキースとも言うらしい。
濱田さんの普段の生業は前述のように建築関連です。多忙を極める日常の合間に、ポンっと出てきてしまったアイデアが、いてもたってもいられない状態になり「描くより他ない」ことになってしまった様子です。
僕はここ信じたい。肉体的、精神的疲労をひとっ飛びで乗り越えて作ってしまったものを。それはそれは密度の高い世界を描いています。濱田さんはその風景を“広場”を描いてるつもりだと教えて下さいました。その『広場』には、これまでの旅先で得た感動や、関西にお住まいの方には馴染み深い“商店街”などがギュッと詰まって表現されています。是非、ご自身の目で濱田さんしか作り得ない世界を覗きにいらしてください。
記 iTohen 鯵坂兼充