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林 敦子 写真展「HOW MANY WORLDS」

iTohenにて第236回目となる今展では、関西を拠点に活動を続ける林敦子(はやし・あつこ)氏をご紹介致します。弊廊では2011年10月開催以来、2度目の発表となります。

4月初め ミャンマー、インレー湖

静かな霧に包まれた湖上では、観光客の乗るカヌー状のボートのエンジンの音だけが交差している。
水上コテージに滞在してからは、どこへ行くのもこのボートという生活になる。
ボートの上から目に飛び込んでくるのは、漁をし、海藻を採り、畑を耕し、洗濯をし、
物を売るインダー族の生活。
やっぱり、どこをとってもアジア的なスタイルで、懐かしい気持ちが溢れてくる。
そこが、湖上であり、浮島であることを除けば。
観光客としてそこに漂っているもどかしさは、近くから遠い世界を見ているからか。

もうそこには、戻れない。

8月末 フィンランド、ラップランド地方

世界は森の中にあった。
ここの住人のほとんどは、トナカイとムーミン一族だ。
よく見ると、キノコのような<どこでもドア>がたくさん生えていて、ちょっとかがんで、ドアの隙間から中を 覗いてみる。

私は、巨大な太陽が産卵したばかりの 一粒の光になって そこにいた。

2012.12 林 敦子


林敦子 写真展によせて 『Ever begun』

三つのグループにわけられた展示がある。
それぞれそこで行われていることは、対象の再現性を限定するアウトフォーカスであり、遠近法を回避するような画面のグレーへの均一化であり、対象のスペクタクル性を相対化する感光したフィルムの提示であり、さらに一点だけで展示されている長時間露光撮影。

これらが示している共通のことがらは平面への還元ということではないか。

その平面とは、何が写っているとかどこで撮影したのかを求めて見るようなことを拒否する平面の露呈である。そこにあるのは光そのものの痕跡としての平面である。

それを見るとき見る者ははじめて知覚そのものの場所が立ち上がるのではないだろうか、始まりの場所として。『ever begun』として。

写真家 高嶋清俊


2011年10月に<Planetone>と題した個展を開催して頂きました。
あれから1年2ヶ月ぶりの発表となりました。

大ぶりの特殊加工された和紙にインクジェットプリントで定着されたイメージは、その一枚の切り取られた世界にあたかも足を踏み込んだような錯覚を抱かせてくれました。
たしかに、国や場所こそ違えど、林さんの写真に捕らえられた景色は、どれもがライフラインぎりぎりの所ばかりでした。
大きな写真とは大したもので、自分の心の中にわだかまっている既成概念と言う名の「コック」をちょいと捻ってみると、没入できる具合が、また全然違うものだとも体感的に教えて頂きました。

最初の個展以降、変わらぬ旅を続けて来られたと言います。今回は、フィンランド、ミャンマー(インレー湖)、他アメリカはキャニオン・デ・シェイの風景がお目見えします。

ところで今回、林さんが展覧会のタイトルに据えた一文。
<How Many Countries?>(何カ国旅したの?)なら、英語が苦手な僕でさえ、その質問の意図は解ります。でも、<How Many Worlds?>って一体・・・

考えれば考えるほど不思議で、甘咬みに似たパラドクスに引きこまれそうな一文です。

以前のコメントでも、「荒涼とした景色の中に一人でいると、自分の大きさがわからなくなってくる。自分が小さくなったのか、大きくなったのか」と書いているように、一見 不安とも取れる状況の中でこそ、林さんの独自の物事の解釈で創造力が刺激され、感化され、雄叫びを上げて、作品に反映されているのではないかと思いました。

パラドクスの謎を解きたいと思いつつ、でも知らないままで・・・。そんな厄介極まる題材に、林さんは、写真という表現を通じて非常に上手に付き合われている“手練(てだれ)”だと感じてる次第です。


今回は新作ばかり17点を発表致します。どうぞこの機会にご高覧頂けますよう宜しくお願い致します。

iTohen 鯵坂 兼充

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林 敦子  Atsuko Hayashi

兵庫県宝塚市在住
京都精華大学美術学部造形学科 卒業

個展
2011.10 Planetone iTohen(大阪本庄西)
2013.01 HOW MANY WORLDS iTohen(大阪本庄西)