iTohenにて第211回目となる今展では、関東を拠点に活動を続ける沖 潤子(おき じゅんこ)氏をご紹介致します。
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東京は日本橋:茅場町にある森岡書店を営む森岡督行さんとは、かれこれ6年ほどのお付き合いでしょうか。iTohenから推薦したい作家の展示をして頂いたり、逆に森岡さんからご紹介頂いたりで、何度か展示に至ったことがあります。「ソウルメイト」と言ってしまうと、なんだか陳腐でカジュアルな響きになってしまいますが、森岡さんの推薦してくる作家は、まず断る理由が見つからないほど、僕の“根”の部分に良い意味での揺さぶりをかけてくれる方ばかりです。つまり“ツボ”を心得てる方なのです。
そんな中のお一人が、沖潤子さん。まだ僕は現物はおろか、本人にさえもお会いしてないのに、送られてきた資料だけで十分、高揚した気持ちにさせられました。
さて、この作家は何を想い、制作に駆り立てられてるのか・・・。また、なぜ「刺繍」という方法を選択したのかを知りたくて、いくつかの質問を投げかけてみました。
Q1.
刺繍を用いるようになったのは何が契機となったのでしょうか?
OKI_JUNKO
ずっと絵を描いている中で表現の方法を模索していました。
洋裁をしていた母が残した沢山の糸や針、布を形にのこしたいとおもったのが
糸と針での制作のきっかけです。
お裁縫をほとんどしない私には、器用に表現できない
「針目」による表現がとてもマッチしました。
もし、私が器用で根気があったら、現在のような刺繍は 生まれなかったと思います。
Q2.
沖さんの創作意欲を掻き立てるものは何ですか?
OKI_JUNKO
圧倒される思い、いても立ってもいられない突き上げる思い
いつもそれを感じるのは作家のアントニ・タピエスです。
昔の“雑穀袋”など人の手と時間がつくりあげた力強い素材からも意欲をもらいます。
Q3.
「poesy」を出版された経緯を教えて下さい。
OKI_JUNKO
私を育んだ様々な事に一つの区切りがあり
いまつくらなければ・・とおもったからです。
Q4.
森岡さんの所で展示したのは何が理由だったんでしょう?
OKI_JUNKO
森岡さんとはじめてお会いしたのは一冊目の作品集「針目帳」が出版された
2009年12月のギャラリーフェブでの個展「祈り」に来てくださったときでした。
森岡書店については以前から昭和初期の建築である壁が美しい空間と聞いていました。
ぜひ個展をと仰ってくださり、2011年7月の個展に至りました。
5月に観たパウル・クレー展に触発され、過去の作品にハサミを入れ
再構築した作品を「poesy」と共に森岡書店で発表できたことはとても幸運でした。
Q5.
モチーフが先にあって、何かを創り上げるんですか?
それとも 身体(手先)のおもむくままに縫い上げるのでしょうか?
OKI_JUNKO
モチーフや下絵は何もありません。
ただ、いつも「ぐるぐる」があり、そこから必ず始めます。
あとは構図、色のバランスを見ながら描いていきます。
時々、心のおもむくままに・・という表現をしていただきますが
無意識の計算をかなりしている、と最近おもいます。
・・と、とても真摯に答えて頂きました。なるほど、この“姿勢”こそが、沖さんの作品を支える強靭な骨格となっているのだと感心してしまったのです。
今展は、前述の通り、2011年の夏に「poesy」と題した自費出版を記念した巡回展示となります。計11点の作品と共に関西では初のお披露目となります。 是非、この機会に会場まで足をお運び下さいませ。