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福森幸重 展

iTohenにて第169回目となる展覧会では、三重県伊賀上野を拠点に活動を開始する作家:福森幸重(ふくもりゆきしげ)氏をご紹介致しました。

福森さんとの出会いがなかなかに思い出深い。と、言うのもかれこれ3年程前だろうか・・・。たまたま留守にしていた私の元を訪ねてきてくれたのだが、作品だけ置いてそそくさと帰っていったと言うではないか。その伝言を聞いて私は、なぜだか無性に腹が立った。作家にとって作品は、ある意味「自分の子」または「自分の化身」とも言えるはずと考えているからだ。それを置き去りにするとはなんと言うことだ、と憤慨したのだ。そしてその置き去りにされたそれは、また何と心を揺さぶる代物なのだろう・・・。 早速、電話で問い質すと「ともかく誰かに観て欲しかった」と言う福森。聞けば、絵の勉強などしたこともなく、突然 近所にあるホームセンターに駆け込み、絵が描けそうな材料を買い込んで描き始めたそうだ。なるほど、支持体となる紙は、いわゆる巻いて売ってある上質紙だし、絵具は主に“マッキー”(油性のマーカー)だ。その衝動は突然だったと語る。何かの啓示だったのか、ご託宣が舞い降りたのか、私には想像が及びもしないがなんにせよ作品が、ただただ良いのだ。 それからは1年に1回のペースで、また新作を携えて来てくれた。だが展覧会にするのは「恥ずかしい」と言う。私としては色々な方々に彼の仕事を披露したい。そんな気持ちでいたのだが、ずっと叶わずだった。そしてまた彼の存在を忘れかけてた頃に、突然「展覧会をしてみたい。」との連絡を受けた。何かに対して決別、あるいは決着をつけたいのか、言葉の端々に意志の強さを感じたのである。

油断ならない自然の猛威の中で悠然と佇む満月。“門”(ここで私は=概念としよう)をくぐり向けようと戦う精神。 とある作品から得た印象を言葉に置き換えてみた。 どのように解釈するかは、勿論 鑑賞者次第だが、様々な角度から入り込める作品だとだけ、はっきり言えるだろう。

<記> SKKY/iTohen 鯵坂兼充