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辻元小百合 展「とれもろ」

トレモロとは、弦楽器などで同じ音を小刻みに反復させて鳴らす、 弾き方のことです。
この弾き方で弾くと、音が震えているような、揺れているような感じに聴こえます。

今回、この「トレモロ」という言葉をコンセプトに、 自分の中で静かに揺れるもの、揺らいで見えるものを キャンバスに育ててみようと思いました。

鳥、木、こもれび、夜景。
モチーフは、少しずつ姿を変えたり、寄り道をしながら、 最後にまた、鳥へと戻ってきました。

無意識の中でおきた不思議な連想ゲームに、自分自身も首をひねるばかりです。

ぐるりと一周して、もう一度鳥を描いてみると、 なぜ鳥が「揺れるもの」として見えたのか、分からなくなっていました。
もしかしたら、揺らいで見えていたのは、鳥が揺れていたのではなく、 その時 モチーフを見ていた自分の足元が、揺らいでいたからなのかもしれません。

何だかうまく言えなくてもどかしいのですが、 今、私はキャンバスに絵を育てているのではなく、
私が絵に、 育てられているような気がしています。

<記> 辻元小百合

iTohenにて第158回目となる今展では、関西を拠点に活動を続ける辻元小百合 (つじもとさゆり)氏をご紹介致しま す。

*
1年振りになる辻元の新作展。昨年は会場を埋め尽くすかのように、色とりどりの<花>が所狭しと並んだ。彼女のコメントにもあったように「花を育てるのではなく、育てられている」と言った気持ちが私なりに理解できたような内容であった。
“他力”を肯定的に見なした物言いだが、 辻元は“描かされている自分”の立場がよくわかっている作家なのではないだろうか。また、ささいな日常の中にあふれる、しかし目を凝らさなければ見えてこない発見を大切にしてきた作家なのではないか・・・そんな感想を抱いたのだ。

新作展の準備にあたり、1点の比較的大きな作品を送ってきた。それは画面一杯に溢れるフラミンゴ。それを観てようやく気付いたことがある。
辻元の作品は、例えば人物を描こうが、風景を描こうが、そのどれもが《無音》なのだ。画面から音が聞こえない。
しかし、それは単に寂しさだけを駆り立てる感情の訴えかけではない。無音ながらも体温を確実に感じる、とでも言えば良いだろうか。

その要因は難しいことでもなんでもなかった。そう、それは他ならぬ、一人の人間としての辻元の体温だったのだ。

今展、“トレモロ(伊: tremolo)”と題した新作ばかりを約20点、展示予定だ。トレモロとは、ギターなどの楽器を用いて、単一の 高さの音を連続して小刻みに演奏する技法のことだと言う。

いわゆる、自身の創作に対する姿勢のことを指し示した言葉としても合点がいったのであろうか。淡々とした毎日の中でも、小さいが個人にとっては広大な発見の成果を、絵という形に落とし込んで見せてくれるに違いない。

皆様、この機会に何卒ご高覧頂けますよう宜しくお願い申し上げます。

<記> SKKY/iTohen 鯵坂兼充

辻元小百合 Sayuri Tsujimoto

1982年 兵庫県姫路市在住
2006年 個展「リリ」(itohen:大阪市北区本庄西)
2007年 iTohen+SEWING GALLERY 企画公募展 参加  
岩瀬ゆか+辻元小百合+吉實恵 3人展「みつめ」
2008年 スイミー協同企画公募展「おんさ」参加
個展「メルシ」(iTohen:大阪市北区本庄西)  他多数
2009年 スイミー協同企画公募展「おんさ」参加
[受賞歴]
2005年 第5回アジアデザインコンペ 入選
2006年 第5回TIS公募 入選 、第11回リキテックスビエンナーレ入選
ACRYL AWARD 2006入選
2007年 TOKYO ILLUSTRATION2007 入選