iTohenにて第134回目となる今展では、関西を拠点に活動を続ける寺田就子(てらだ しゅうこ)氏をご紹介致します。
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なんとも儚げで、しかし相反して強靱な意志を持つ作品。寺田の作品を初めて目にした時、私はそのような印象を抱いた。
儚げと書いたのは、寺田の作品のサイズがまず物理的に小さい事を指す。何ともこじんまりした手のひらサイズがほとんどなのだ。
そして寺田の作品には、よく“鏡”が登場する。普段、私達の日常生活でも日に一度 は目にするはずの鏡。さほど意識はしないものだ。歯を磨いたり、女性であれば化粧 をする時には必ずと言って良いほど使う物。要は自分自身の姿を確認するための道具と言って良いだろう。
だが、よく考えてみると、鏡に映る自分は、当然ながらいつまで経っても“逆さ”で ある。鏡本体に触れることは出来ても、その中に、同じ動作をするもう一人の私には決して触れることが出来ない。 だからこそ、その関係性に物語が生まれるというものであろう。
いつまで経っても到 達出来ないなどとは、主観的な意見だが、人生そのものと同じではないかと考えてしまうのだ。
近年、スーパーボールや、分度器、虫かごや貝殻がよく登場する。言わばすべてが何の変哲もない既製品。しかし、この既製品達は、寺田の作品に出演すると、途端に重力を失う。重力という足枷から解放してやっているとでも言うのか・・・。 既に本来の真っ当な役目から外されている。
目的は失われるが、それはそれで良いで はないか、と言わんばかりの強気な主張も聞こえてくる。何はともあれ、完成された 作品の視覚が美しいだけに信憑性が増すと言うものだ。
だからこそ、私は密やかな彼女の意見に耳に手を寄せ聴いてみたくなる。彼女は鏡の中の世界も知っているはずだから。
<記> SKKY/iTohen 鯵坂兼充
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寺田就子 Shuko Terada