2006.3.24 _ 2006.4.2
<紹介文> |
2人の出会いは高校時代にさかのぼる。 ともに同じ美術部で、先輩と後輩同士として知り合った彼女たちは、気の合う友人としてまた、信じ合える絵描き仲間として数年経った今でも交友を続けている。 いつかは2人で展覧会を開きたいといった考えが出てくるのは自然な流れだろう。しかし、踏ん切りがつかないまま時間はキチンと経過し、曖昧な想いは普段の生活の優先順位から段々と下落していく。 ある日、ひょんな事から2人で伊勢神宮に行く機会が出来たそうだ。各所を参拝しながら、お互いに共通する事柄や絵画や制作に対する意思の持ちようなど正直に打ち明けながら歩き続けるうちに、濃密な時間を築き上げることができたという。その成果を形にすべく展覧会に発展することになったのだ。 双方とも表現方法の手段としては主に<版画>が多い。直接描くのとは違い、“一呼吸”が必要になってくるこの方法にも、彼女達なりに抽出の仕方がかなり異なるようだ。 河村は主に木版を使用する。自分の足で赴いた先の風景や記録写真を元に作品のエッセンスを抽出していく。浮世絵しかり、かの有名な棟方志功の木版画を見れば歴然としているが、彩色のトーンは、比較的低いのが特性の一つだ。言うなれば<静か>だろう。 しかし、河村の木版画は彩度が鮮やかである。描くモチーフ一つ一つに太陽光の輝きを感じとれる。 一方、鈴木は現役の学生。課題と並行しながら個人の活動に励む。絵を描いている時は無心になれるそうだ。描きながら、その描かれる一つ一つが自分にとって何のメッセージなのかを追求していると言う。 主に使用するのがコラグラフ。あまり見かけない手法だが、版画の表現方法の中でも特に直接的で、より表現者の身体的な癖が出やすい版種と言えるだろう。 今展、<うららか>と括りをつけた2人展は、春に行われるこの展覧会を即物的に捉えた一面としての印象もあるが、それ以上にこの二人の関係がよく表れた言葉のように思える。 つまり、制作の“肥やし”となる言葉や言動をお互い熟知しあい、程良い温度を持って接し合っているという意味だ。 ポカポカとした日差し。ある晴れた春の日にのんびり散歩すると誰もが得も言われない<幸せ>という言葉を思い浮かべるのではないだろうか? <記> SKKY 角谷 慶 ・ 河村清香 KAWAMURA,Sayaka 1982年生まれ ・ 鈴木美里 SUZUKI,Misato 1983年生まれ |