今年の5月、光内亘利がT-BOXの壁にキャンバスの絵を飾った後、題名は 「はるはるるんるん」と言った。最初何のことかわからなかったが、今年の秋に 彼に赤ちゃんが生まれる。おとこ、おんなに関係なく、赤ちゃんには「はる」と名づけるそうだ。
今回、「ギャラリーいとへん」での展覧会テーマは、これから生まれる赤ちゃんである。 絵描きが「描けない！」と悩む姿がよくみられる。苦労し、混乱する一つに、 何をテーマに表現したいか分からないことがある。彼は身の回りにあるものを取捨選択し、 テーマを選べる力をもっている。そして、そのイメージを作品にする技量がある。子供は好きなワンチャンを大きく描いたりする。ところが家や、お父さんお母さんは、 端に小さく置かれてしまう。子供心を忘れてしまう大人になると、興味のある大切なものを 描くという決まりきったことが出来ない。上手に描こうとすればするほど、大切なものは遠ざかる。
光内亘利は、見た通り描く技術を持っている。昨年、彼の描く姿を見ていると、 あえて手元を見ずにクレヨンを走らせたり、人と話しながらアクリル絵の具を紙の上においた。 無意識的にかもしれないが、持っている技術の一部を捨てている。技術がありすぎるとそれが邪魔をして、 子供の心で描くことが難しい。彼の絵は一見すると子供の絵だが、子供には描けない。 彼は子供の気持ちで大人の絵を描く。

TEXT ： T-BOX（東京）　高橋盛夫