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渡邉 知樹 作品展「だったらそれをして自由になればいい」

iTohenにて第322回目となる展覧会は関東を拠点に活動される作家:渡邉知樹(わたなべともき)さんをご紹介致します。


渡邉さんの事を知ったのは、確か「ぺぺぺ日めくりカレンダー」と言う商品を作ったのだ、と言うご案内をお送り頂いた事が契機だったと思います。確かな画力をお持ちなんだろうと、だいぶユーモラスな(ちゃんと正直に言うと、結構“ぶっ飛んだ”)絵とテキストが添えられてものを拝見しました。

当然“日めくり”なので、それ相応のボリュームも成していました。でも、折角ご案内を頂いたのにも関わらず「あぁ、これだと放っておいても売れる」と思ってしまい、では当方でお手伝いすることもなかろうと、そのまま忘却の彼方へ。何と失礼な事をしたのだろうと、これを書きながら反省してる次第です。

ある時SNS上で、信用するに足るフリーランスの編集者の方が、この渡邉さんの展示のことを写真とともに紹介されていました。それを見て「あれ!?」と思ったのです。「ぺぺぺ日めくりカレンダー」と、この作品の差は何なんだろうと。僕の中では、すぐに同一人物の仕事とは思えませんでした。モニター越しに見ても、なんだかとても気になる絵。一体、どんな人物が、この絵を描いているのか、日を追う毎に興味が増してきたのです。もうこうなると会わずにはいられません。早速連絡を取り、東京で初めてお会いすることに。

大阪でもなかなか見る機会のない「ヒョウ柄」のジャケットを“いなせに”着た渡邉さんにお会いすることが叶い、話をするうちに益々、惹きつけられたのです。

なかなか稀有な体験をお持ちの渡邉さん。ウェブサイトの略歴に「ヒッチハイクをして似顔絵」とあります。

渡邉)
20歳の頃、父親に怒られたのをきっかけに、その日の夜に似顔絵道具と寝袋を持って電車に乗り、東京の次に大きな町ということで大阪を目指しました。40日間くらいで結構な金額を稼いで、それをきっかけに大学受験もやめました。似顔絵をやっていくというより、違う道もあると実感したからです。はじめのころの旅はお金が無くて強引な方法で移動してましたが、数年後にヒッチハイクという手段を知り有効に使うように。今はお金と関係なく旅の醍醐味としてヒッチハイクを時折続けています。似顔絵は18歳の頃、井之頭公園で始めたのです。

人が何かを始めるときには、何かのキッカケが無いと事が起こりません。これでは少年時代の渡邉さんの事を聞かないワケにはいかないでしょう。

渡邉)
小学生の頃はとにかく色んな人と遊んでました。同じ学年ほぼ全員の家を知っていて、とりあえず学校が終わったら誰かの家に行く。転校生が来たら初日に家を聞いて、アポ無しで遊びに行ってました。で、翌日はまた別の人の家に。広く浅くというか、ここまで浅いと広さにもならないんじゃないかというほど。今考えてみると友達に会いたいというよりも、ただ誰かと一緒にいたくて、それが誰でも良かったのかもしれません。実家は洋菓子店で、父が製造、母が喫茶をきりもりしていました。中学生の頃はサッカー少年に転身。高校からは突然アーティスト気質で、裸足で電車に乗って学校に行ったりしてました。

そうか、、「ぶっ飛んでる」と感じたのは、どうやら間違いじゃないらしい。ただ、渡邉さんの場合は、他人に迷惑を掛けている訳ではなく、妙に均衡のとれた「ネジの外れ方」だと感じました。 それは、作品の方にやっぱり表現されています。軽やかで、かと思いきや重みも感じ、明るくて、でも健やかな「闇」をも併せ持った表現と言いますか。

相反したものが“仲良く”同居している事が、僕が渡邉さんの仕事に惹かれた理由かも知れません。

関西では初の発表となりました。新旧15点ほどの作品をご披露する予定です。この機会に是非、ご来場下さいませ。

iTohen 鯵坂兼充

 

渡邉知樹