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花堂 達之助 作品展

iTohenにて第262回目となる今展は、花堂 達之助(はなどう・たつのすけ)さんをご紹介致します。

表現の中心は、「絵」です。

コピック(デザイナーやイラストレーターが頻度よく利用するマーカーのようなもの)を使い、主に紙にその表現を定着させています。

花であったり、風景、また人物をモチーフとして描く、言わば具象的なものですが、そのどれもが微細な色を組み合わせたカラフルな風合いが特徴です。
万華鏡的な色彩と言っても良いかも知れません。

コピックと言う画材は発色の良さで知られますが、花堂さんのそれは、カラフルなんだけれども一段、トーンが沈んで見えます。紙の吸い込みが原因かと思われますが、その華やかさの裏に、一律に流れる静かな空気感が、彼の仕事を特徴づけているように思われます。

長崎で生まれ育ち、青年期には東京へ。しらばく後に、関西に移り住みます。よほど水が合ったのか、生活の根を下ろし十数年が経過したと言います。

絵は、独学だと花堂さん。当然、仕事を持ちながら二足のわらじを履くように絵を描き続ける彼ですが、いったんはあきらめかけたそうです。その道に引き戻されたのは、当時の職場の同僚が原因だったと言います。彼の中に眠りかけていた何かのスイッチが入ってしまったのでしょうか、それからはコンスタンな制作が再開されました。

自ずと、自分以外の人に観て欲しいという欲求が芽生えます。友人をつてに知った場所で初めて展覧会を開催。その時の悔しさと喜びが一緒くたに押し寄せて、うまく消化できなかったのか、展示をして発表することに意義を感じ始めたことが、今展を開くにあたっての要因のようです。

この展示を契機に、彼は新しく出来た家族と共に地元である長崎に帰り、親の仕事を引き継ぐ決意を固めました。そういった意味でも、彼個人の中の問題ですが、一つの人生の区切りをつける為の個展開催でもあるようです。

思い出作りでもなんでもなく、新しいスタートを踏み出す為の一つの明快な区切りとして、この個展は、自分の中に布石を残す具体的な行為に他ならないのかも知れません。

肝心の絵ですか?
面白いですよ。
なんでこんな絵を描くのでしょうか・・。

花堂さんの絵の感想を、と問われれば文章の末尾に思わず (笑)や、w と付けたくなる気持ちです。

多分、一枚一枚を真剣に描いています。でも、そのどれもがなんだか可愛い。なんだか可笑しい。それは多分、彼自身がそういった人物なんでしょう。

ややもすると、ちょっと変な人・・で終わってしまう感じは否めませんが、絵がその不思議な具合をうまくカバーしています。だからこそ人としてのバランスが良いのでしょう。

この発表でどのような発見があり、どんな意味を見出し、どんな人たちと出会うのでしょうか。定点観測的にこの場所にいる僕としては、とても楽しみにできる2週間になりそうです。

iTohen 鯵坂 兼充