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野井成正「あそびごころ」出版記念作品展

iTohenにて第261回目となる今展は、関西を拠点に長きに渡って、空間デザインを中心に仕事を続けてこられた野井成正(のい・しげまさ)氏をご紹介致します。
これを機会に当方では、野井さんの仕事をご披露すべく作品集を編集及び、デザインさせて頂きました。その販売はもちろん、会場では膨大な数のドローイングなども直に御覧いただける機会となります。


野井さんのこと

少年の頃から映画に夢中で、好きな作品は最低三度はくりかえし見た。
七人の侍に胸躍らせ、ジャン・ポール・ベルモンドの煙草のくわえ方にしびれた。
大好きな船や戦車の絵を描いていれば、何時間でも飽きなかった。
かぶりたい帽子が思い浮かんだら、迷わず針と糸を手にした。
気づけばずっと、なにかを作らずにはいられなかったし、自分で作るしかなかった。
目に映るもの、手にふれるもの、耳にするもの、その重み、手ざわり、匂い、
あらゆるものに心をときめかせ、時には焦れるような熱にかられ、
少年がきれいなビー玉を集めるように、その記憶を胸の宝箱に収めた。

野井さんは「デザイン行為の本質は まごころ」だという。
どれだけ相手を思いやり、相手に惚れることができるか。
その惚れた気持ちをかたちに変え、社会に伝えるのが自分の空間デザインだという。
クライアントとの対話の中で、本当の相手の姿が、
純粋な思いとともにこぼれ出した瞬間、
その人だけが放つ「色気」に、気持ちが昂り、一気にアイデアが広がる。
「僕は、色気って“正直さ”やないかなあと思うんです」。

シンプルで、それでいて心惹かれるドラマティックな底知れなさもある空間。
そして、人を受け入れ包み込むやわらかい「居心地」という余地がある。
そのやわらかさは、野井さん自身の醸し出す空気感に近い。

「僕はいつまでたっても、世間知らずの人知らず。
でも結局人が好きなんですね。最近ようやくそれが分かってきたかな」。

そう語る野井さんには、自分を大きく見せようとかいう計算がまったくない。

「不器用な人ですから、あの人は」と人にも言われ、それゆえ深く愛される。
あるバーのマスターは、
「野井さんと俺の四十年の関係を、他人に軽々しく話したりはでけへんよ。
それだけ大切な人で、大好きやから」と私を突き放しながらも、
別れ際に「野井さんのこと頼みますわ、ちゃんと伝えてあげて」と言った。
野井さんとは、きっと、そういう人なのだ。

そして野井さんは、一対一で真っ正直に向き合える相手と、
真実の火花を散らす瞬間を、今も待っているのだ。

文_松本 幸(QUILL


[聞き手:小泉誠×語り手:野井成正によるトークイベント]
日時:2014年1月18日(土)18:00~(約90分を予定しております)
場所:Books Coffee Gallery  iTohen
参加費:¥1,000 (1drinkは別途ご注文下さい)

iTohen 鯵坂 兼充