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川島朗 展「記憶の森」

iTohenにて第183回目となる展覧会では、関西を拠点に活動する川島朗(かわしまあきら)氏をご紹介致します。是非、期間中に足をお運びください。


朽ち果てた《鍵》。川島の作品によく登場するその物体は、果たして何を意味するのであろうか?そんな思いをキーワードに作品を見回してみた。
箱に収められた空間や家、椅子などがぽつりと彩られた作品。写真をデジタル加工したのであろうか、摩訶不思議な階段を持つ石で張り巡らされた空間。その空間は、どこへも行けそうで行けない印象を持ち、鑑賞者の一人である私の心の奥底に、ある種の恐怖感と好奇心を植え付ける。総括すれば非常に多彩な作品群が所狭しと並べられた。

川島曰く、《鍵》が作家自身にとって意味するものは“閉じられたもの” “目に見えないもの” “わからないもの”の象徴だと言う。
閉じられたものや目に見えないもの、そのわからなさにこそ、現実に見えているものとはまた違った不可思議な意味があるのではないか?と考えているとの事だ。

勿論、彼も作家生活のみで“食べていけている”わけではない。制作に没頭する時間が欲しいからこそ、また別の手段として働いている。その職業で出合った<樹脂>という素材が、また個人の制作に活かされているところに、彼の誠実さや生真面目な部分が伺えてきて、私は素直に川島本人に興味が増した。

今、まさに自分のスタイルとは何か?またこの先の打開策ー作家生活で自立するするための方法としてーを探るための展覧会になりそうだ。

少し普段の生活のスピードを緩めて、じっくりと鑑賞して欲しい。そこかしこに、《鍵》が必要な場所が準備されていることに気付くはずだから。

記_SKKY/iTohen 鰺坂兼充