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武市真人展「海王星の灯台守」

<紹介文>
関西を拠点に活動を始めた作家<武市真人>をご紹介致します。
武市が本格的に発表をするのは今回が初となります。

某専門学校出身の武市は、そこで商業美術(イラストレーション)を学んだ。しかし卒業と同時に描くことに対しての一切の興味を無くしてしまったと言う。
描く目的そのものを見失ったのかも知れない。はたまた、“誰に対して”の表現なのかも分からなくなってしまったのもあるだろう。

一歩間違えば、生きる目的すらも見失いかけた彼は、発表に至までの期間を自分の言 葉で<空白の6年間>と語る。

しかし、突然叩き起こされたかのように、彼は猛然と描き始める。
それは、今から約10ヶ月ほど前の事だ。例えるならば満々と貯められた汚泥をも含 むダムが決壊するかのごとく勢いだったのだろう。
とても短期間で描いたとは思えない作品の量は、それを如実に表現している。

「なぜか分からないが、描いてしまってたんです。」と武市が描き貯めた作品群は、 その壊れてしまったダムのイメージを私に投げつけてきたのだ。
また、その空白期間こそが、彼の表現者としての熟成を手助けしていたのかも知れないと考えるのだ。

ある地点から確実に重なっていく作品をどう排出していくべきか?
また表現者としての『立ち位置』を知りたいと、今展を開催するに至る。

彼が、ここ最近描いた一片は徐々に落ち着きを取り戻し、不用な物が削ぎ落とされているといった印象だ。その中から表れた形は、まるで未見の灯台のように漆黒の空間の中でそびえ始めた。
それは地球ではないどこか・・・。

例えるならば、それは遠い遠い銀河系の中にある惑星の一つに林立する『灯台』のようだ。
その中から武市は、ひっそりと地球を見守る『灯台守』のような視点で他者を観察しているのかも知れない。

また一人、未開で大きな期待を孕んだ新人が突如現れたと言った印象である。

<記>skky_鯵坂兼充