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ウッキー富士原 個展「回れー、左!」

<紹介文>

新春の第一回目、iTohenにて第25回目となる企画展では、現在 拠点を和歌山に置き作家活動を進行中である<ウッキー富士原>をご紹介致します。

制作を続ける彼の作品には一貫して“使われなくなったモノ”が見つめ直され随所に登場する。それが身辺で拾い集めた廃材であり、居住空間として役割を終えた古民家の解体工事で出てきた不要品であったりまた、画学生が卒業と同時に使い道をなくしてしまった絵具であったり道具であったりと様々だ。
極力、自身の必要最小限度なモノだけを携えて旅を続ける<お遍路さん>のように彼は作品として自立できるものを作り直しているかのようにも思えてくる。 それで充分、事は足りるのだとでも言わんばかりに、潔い身なりでズンズンと目的地へ歩いて行く。

学生時代は、祖父の影響から建築学を専攻していたそうだ。卒業制作という芸術大学に通う者にとっては一大イベントである発表に、彼は“本物”のツリーハウスを奈良県の東吉野に作ったという。教授陣を困らせる結果になったものの、バーチャルでは決してなく“本物”がどういった物事であるかを、その時から無意識のうちに提示しようと懸命になっていたのかも知れない。
廃材を使った作家は近年では珍しくなく、歴史的に見ても時代が生んだものとも思える。しかし、一様に素朴であったり懐古主義的な趣を感じさせるものに多く出会う今日、彼はそれとは別の異質な何かを感じさせる。つまり“新鮮”なのだ。
渇いた素材の中に、通底する瑞々しさがウッキー富士原の作品の魅力の一つかと思える。彼の手により水分を含んだ作品達は、どのような役割を、この現代社会に成立させようとするのであろうか?

目が離せない作家に、また一人、出会ってしまった・・・と言う印象である。

<記> SKKY 鯵坂兼充