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岩瀬ゆか個展「たたずみ」

<紹介文>
本当の日常生活とは一体なんだろうか?

答えを見いだせるのか、それすらも疑問に思える<主題>に岩瀬は本気で取組み始めた。 と、言うのも美術系の専門学校を出て、現役で印刷会社にDTPオペレーターとして就職した岩瀬に表現者としての情熱を再燃させる引き金を引いたのは、とある人物からの「一体、何になりたいの?」の一言だったと言う。
突然、胸にズシリと停滞するようなその一言は、思い返すと若い学生の頃にも何度か漏れなく聞かされた言葉のはずだった。岩瀬は停滞してしまった、そのアイデンティティーが問われる難題に次第に解決の糸口を見失いそうになる。それを打破する手段として彼女は作品制作を再開することになる。

岩瀬ゆか自身としては初めての公の場でのまとまった発表となる。彼女にとって個展とは未知の人々に発表し、会話を重ね評価を得ることにより自分の現在おける位置と方向を確認する最善の方法と考えたわけだ。 それが個展開催への衝動となる。前向きに自己の問いに答えを見出すための至極当然の結果とも言える訳だ。
彼女の描く作品には、頻繁に人がモチーフとして登場する。近作では顕著に顔と身体のバランスが崩れ始めた。それは決してバランスの悪さを言うのではなくむしろ逆で、岩瀬の興味の対象がよりクローズアップされて来た証拠だとも思える。それは描く時間にも表されている。普通、描けば描くほど<要領>を得て作業自体は早くなるものだが、だんだんと1枚に取り組む時間が長くなって来ていると言う。 しかし、岩瀬は<顔が描きたいから・・>では決してないと言う。『タタズミ』と題した今展では彼女のモチーフとなる人は勿論だが、それ以上に、その人や物が持っているはずの<空気>を描きたいそうだ。その<空気>にこそ、<本当の日常生活>の答えの断片が、まるでパズルのピースのそれのように散在してるに違いないと確信しているのかも知れない。 人によって千差万別。当然、人によって見え方が違うものだが<見えない何か>を視覚表現を通して<観えるもの>へと浄化させることに熱意を傾けているように思える。それはまるで、目の前にいるマジシャンの巧妙なトリックを寡黙に見据え、暴いてやろうという静かな意気込みのようにも感じる。

しかし、それ以上に彼女の作品を通して感じることは、『描く』行為そのもの。紙に絵具でペタペタと塗り込む作業そのものに歓びを感じてることが純粋に伝わってくる。そのことが彼女の作品の魅力を支えているに違いないと思えた。 スタートを切ったばかりの若手だが、目標にしてることは何かと問うと『長く続けていくこと』と言う。その少ないながらもキッパリとした口調に、女性ながらも頼もしさを感じた。

<記> SKKY 鯵坂兼充

<履 歴>
1978年生まれ。

大阪美術専門学校イラストレーション学科卒業後、 印刷会社のDTPオペレータとして4年勤務。
現在フリーで活動。